子どもの発達

発達障害児に対するCO-OPアプローチとは?支援の概要や特徴を解説!!

「CO-OPアプローチって初めて聞いた。」
「CO-OPアプローチはどんな流れでするものなの?」
「CO-OPアプローチに興味がある。」

CO-OPアプローチは発達性協調運動症児・者(DCD)に対する課題指向型アプローチの一つであり、治療効果のエビデンスが報告されている支援方法です。正式名称は「Cognitive Orientation to daily Occupational Performance」で、日本語では「コアップアプローチ」と呼ばれています。

この記事では発達性協調運動症児に対するCO-OPアプローチの概要について説明します。不器用に悩む子どもたちへの支援方法はさまざまな方法があり、親として支援方法を選択することを難しく感じることも少なくないかと思います。本記事を最後まで読むことで、お子さんの治療法を選択する際の判断材料になり、お子さんにとってより良い支援方法を選択する一助になれば幸いです。

1.CO-OPアプローチとは?


CO-OPアプローチとは、子ども自身の問題解決能力を育むことで対象とする活動のスキルを習得できるように働きかけるアプローチのことを言います。
こちらの論文ではCO-OPアプローチの効果のエビデンスを示しています。

例えば、お箸を使うことが苦手で困っている子どもがいるとします。その場合、CO-OPアプローチでは直接箸の持ち方や使い方を指導せずに、子ども自身に「どうしたら上手に箸を使うことができるか?」 を考えてもらうようにします。

このように子ども自身にできない原因を考えてもらい、子ども自身の問題解決能力を育み不器用さを改善していこうとする支援方法です。その際に大人の役割は子どもが苦手な動きに気がつけるように声かけ(コーチングともいいます。)をすることにあります。

CO-OPアプローチの3つの中心概念
CO-OPアプローチには3つの中心概念があります。
a.子ども中心に考える
子ども自身が能動的に活動に参加し、子どもの目標が最優先されることです。CO-OPアプローチでは子ども自身が目標を設定できるようにことから始まり、目標が達成できるように大人がサポートします。

b.目標とした活動の練習をする
筋力強化やバランス強化・手先の細かな運動をできるようにしようと取り組むのではなく、スキルの習得を目指して目標とした活動を練習します。

c.子ども自身が問題解決をする
子ども自身が問題解決をすることを重視します。

以上の3点を中心にCO-OPアプローチを実践していきます。

2.CO-OPアプローチの具体的な進め方は?

以下ではCO-OPアプローチの具体的な進め方について説明していきます。

a.子どもと目標を決める
CO-OPアプローチは子ども中心の支援方法です。子どもが「やりたい」と考えている活動(例: 二重跳びが10回できるようになりたい! お箸を使ってご飯を食べられるようになりたい! などなど)を引き出してあげます。目標とする活動に対して現時点での遂行度と満足度を子どもに聞いてあげることで、子どもがどのように思っているのか把握することができます。

ここでは具体例として、お箸を上手に使えるようになりたいアイちゃんについて考えたいと思います。

b.目標とした活動ができない原因を分析する
目標が決まったら実際に活動をやってもらいます。実際に観察して「できない原因」を分析します。原因を子どもと分析しやすくするために動画撮影をしておくことが勧められています。

お箸を上手に使えるようになりたい!と目標を決めたアイちゃんに実際にお箸を使う様子を見せてもらいます。この時に後で子どもと振り返れるように動画撮影をしておきます。支援者が分析すると、どうやらお箸の持ち方が安定せず毎回持ち方が異なることに気がつきました。

c.作戦を考えて練習する

この段階では子どもに2つのことを教えます。1つは「Goal-Plan-Do-Check」の問題解決のやり方です。そしてもう1つは「子どもオリジナルの作戦」を見つけることです。

活動に取り組む前に問題解決のやり方を子どもに教えることで、なぜできなかったのか・成功した場合は何がよかったのかという問題解決能力の基礎となる考え方を育むことができます。子どもオリジナルの作戦では、活動ができない原因を改善できるように大人が声かけをして作戦を発見できるようにガイドしていきます。この作戦を用いて、苦手とする活動(例:なわとび・お箸など)を練習します。

なぜやり方を直接大人が教えないのかというと、子どもが成長するには子ども自身が試行錯誤して問題解決をしていく経験が重要だとされているからです。このような学習方法は発見学習と呼ばれています。したがって、CO-OPアプローチでは大人が直接子どもに教えるのではなく、子どもが問題解決をできるように声かけをしていくことを重視しているのです。

アイちゃんに問題解決のやり方とお箸が上手に使えるようになるためのオリジナルの作戦を立てることを教えます。アイちゃんと支援者で一緒に動画を見ながらオリジナルの作戦を、アイちゃん自身が立てられるように支援者は声かけをしていきます。すると、アイちゃんは「お箸の持ち方が違う!」と気がつくことができました。「しっかり持つ作戦」と名前をつけてアイちゃんはお箸を使う練習を続けたところ上手にお箸が使えるようになったのです。

d.作戦を他の場所でも使えないか応用する
CO-OPアプローチでスキルが身についた際には、子ども自身が見つけた問題解決の作戦を他の活動でも使えないか応用を促していきます。

アイちゃんはお箸を上手に使えるようになりました。支援者はアイちゃんに「今回の作戦は他にもどこで使えるかな?」と作戦の応用を促しました。するとアイちゃんは「お箸の持ち方と鉛筆の持ち方が似てる!」と思いつき、お箸の使い方から鉛筆の使い方に応用されました。

e.保護者も協力し、みんなで目標の達成に向けて努力する!
CO-OPアプローチで身につけた作戦を使って、家庭でも継続して練習できるように保護者にも参加してもらい、子どもの目標の達成に向けていくようにサポートを促します。

3.CO-OPアプローチのQ&A

Q1.どんな子どもが対象ですか?
発達性運動協調症の子どもを対象に開発されたCO-OPアプローチですが、現在では自閉スペクトラム児・注意欠如、多動性症(ADHD)・限局性学習症・脳性麻痺児にも効果があることがわかってきています。

Q2.どのくらいの頻度で効果が出るの?
個人差はありますが、CO-OPアプローチを受けて1ヶ月で効果が出たと報告する論文があります。

不器用さが疑われる発達障害児に対するCognitive Orientation to daily Occupational Performance(CO-OP)を用いた実践 塩津裕康

Q3.不器用さの改善以外にも効果はあるの?
CO-OPアプローチでは子どもの問題解決能力を育む支援方法であるため、自己効力感や自己調整の成長が期待できます。

自己効力感は、課題に対して実行する能力に対する自身のことです。自己調整とは、課題に対して自身の情動や行動を調整する能力です。
発達性協調運動症の子どもの多くは運動の失敗経験が積み重なり、2次障害として自己効力感の低下や、困難な状況や失敗した後などに立ち直る力とされるレジリエンスも低下していると言われています。
ここからは私見になりますが、CO-OPアプローチでは問題解決能力を重視して、子どもができた!感じることができるように支援していくため、成功体験が積み重なり、自己効力感の成長に効果があるのではないかと考えています。

4.まとめ

CO-OPアプローチは発達性協調運動症児・者に対する課題指向型アプローチの一つであり、治療効果のエビデンスが報告されている支援方法です。

CO-OPアプローチでは、

a.子ども中心に考える
b.目標とした活動の練習をする
c.子ども自身が問題解決をする

の3つを中心概念として支援を実施していきます。
不器用に悩む子どもたちへの支援方法はさまざまな方法がありますが、お子さんにとってより良い支援方法を選択する判断材料の一助になれば幸いです。