子どもの発達

発達性協調運動症(DCD)とは?症状・困りごと・支援方法・相談先について解説


「変な持ち方で鉛筆を使っている」
「ボールをキャッチできない」
「走り方がぎこちない」
「手先も運動も不器用で苦手」

このようなことでお困りではありませんか?
もしかしたら、運動が不器用で悩んでいる子どもは発達障害のひとつである「発達性協調運動症」であるかもしれません。

この記事では発達性協調運動症の症状・支援方法・相談はどうすればいいのかについて説明します。最後まで読むことで、不器用で悩んでいるお子さんの支援方法や相談先を知り、明日からどうすればいいかわかるようになります。

子どもが不器用で悩んでいる親御さんはぜひ最後までご覧ください。

1.発達性協調運動症(DCD)とは

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発達性協調運動症とは、運動が上手にできない「不器用」を呈する発達障害のひとつです。英語では「Developmental Coordination Disorder(以下DCD)」と呼ばれています。

運動は粗大運動と微細運動に分かれています。
粗大運動は姿勢を保ったり身体全体を大きく動かすような運動です。具体的には、走る・ジャンプするなどの運動を指します。
微細運動は手や指を使った細かい動作を必要とする運動です。具体的には、字を書いたりハサミを使うなどの運動を指します。DCDでは粗大運動が苦手な子・微細運動が苦手な子・粗大運動も微細運動も苦手な子がいます。

アメリカ精神医学会が出版している、診断基準・診断分類であるDSM-5ではDCDと診断する基準は以下の通りとなっています。

A. その人の年齢や経験から考えられるよりも協調運動技能の獲得や遂行が
明らかに劣っている
B. 運動技能の欠如が日常生活に支障をきたす
C. 症状の始まりが発達初期段階であること
D. 運動技能の欠如が知的能力障害などの運動に影響を与える神経疾患によるものでないこと
出典:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアルより筆者が変更をした

5歳から11歳のお子さんの5〜6%の割合でDCDを有していると言われており、幼稚園・学校のクラスに少なくとも1人はDCDを有するお子さんがいる可能性が高いことがわかります。

2.「不器用さ」の心への影響

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DCDを有するお子さんは自尊心・自己肯定感・レジリエンスといった自己に対する評価が低下しやすく、抑うつ障害や不安障害へ繋がりやすいことが指摘されています。

DCDは不器用を呈する運動の困難さが特徴ですが、遊びやスポーツに取り組む楽しさを低下させ子ども自身から運動をする意欲を失わせていきます。その結果、体力低下や肥満を引き起こすといわれています。また、運動における失敗体験の積み重ねは自尊心や自己肯定感、レジリエンスも低下していきます。さらに集団で行うことの多いスポーツは、上手にできないという理由から仲間はずれにされてしまったり、最悪の場合イジメにつながってしまい不登校になってしたりするなど、子どもの心の成長に影響します。

不器用さが子どもの心の成長に大きく影響を与えてしまい、心の問題に発展しさらに運動をしなくなってしまうという悪循環が指摘されています。

3.具体的な困りごと

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DCDのお子さんは粗大運動と微細運動のそれぞれに具体的にどのような困りごとがあるのでしょうか。

粗大運動では
・走り方がぎこちない
・物によくぶつかる
・縄跳びが飛べない
・階段の昇り降りがぎこちない
・自転車に乗ることができない

微細運動では
・お箸を上手く使えないため食べこぼしが多い
・文字を書くと枠からはみ出してしまう
・ハサミを使って紙を上手に切れない
・靴ひもが結べない
・洋服のボタン、ファスナーを止められない

以上のように、不器用さは運動だけではなく生活面でも影響を与えます。

4.支援の方法について

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DCDに対する支援方法は大きく以下の2種類に分けられます。

・過程指向型アプローチ
・課題指向型アプローチ

2つの支援はともに、対象となる子どもの運動能力を向上させ、日常生活を妨げている困難を改善していくかを目的としていますが、援助者がDCDをどのように捉えるかという立場により支援方法がわかれています。
以下では、それぞれの支援方法について詳しく説明します。

①過程指向型アプローチ
過程指向型アプローチは、運動能力の発達の遅れや阻害の要因は、感覚から運動の発現までのプロセスの一部(例えば、視覚・触覚・注意など)に焦点を当てて、その部分の向上を図ることで、DCD児の運動能力を高める支援方法です。

代表的なものに、感覚統合療法(sensory integration therapy : SI)があります。具体的にはブランコやブラシなどを用いて感覚系の機能を高めて、それぞれの感覚の統合によって運動能力を高めようとします。

過程指向型アプローチの特徴はさらに、日常生活の中で困難にしている特定の能力を直接教えないことがあげられます。例として、お箸の操作が苦手な子どもに対して支援をするときに、お箸の使い方を教えるのではなく、使えない原因が手指操作の機能にあると考え、ひもとおし遊びなどの練習をして改善を図ろうとします。

しかし現時点では過程指向型アプローチによる支援効果については、十分な根拠が示されていません。しかし今後、DCDが生じる発症機序や原因が特定されれば、支援効果の十分な根拠が得られる可能性もあります。

②課題指向型アプローチ
課題指向型アプローチは、子どもに合わせた指導方法で運動能力を直接的に教えようとする支援方法です。例えばお箸の操作が苦手な子どもに対しては、直接お箸の操作を教えて、能力の改善を図ります。

近年、DCDの支援方法に対するガイドラインが作成されています。それによれば課題指向型アプローチである「CO-OP(Cognitive Orientation to daily Occupational Performance)」や「NTT(Neuromotor Task Training)」の介入を推奨してもよいかもしれないと示されています。CO-OPに関しては支援効果について、数多くの根拠が報告されるようになりました。

現時点では、課題指向型アプローチに軍配が上がっているというところですが、今後の研究とともに立場が逆転する可能性もあります。

5.発達性協調運動症のQ&A

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Q1.子どもが発達性協調運動症と感じたら、どこに相談すればいい?

A1.地域にある児童相談所や保健所に相談してください。児童相談所は18歳未満のすべての子どもを対象にしています。保健所は障害の有無に関わらず地域住民の健康に関する相談や指導をする機関です。

Q2.子どもに専門的な支援を受けさせたいけど、どうすればいい?
A2.発達障害と診断がなくても、障害が疑われる児童を対象にした療育サービス(児童発達支援・放課後デイサービス)があります。サービスを利用する場合、「通所受給者証」を取得してください。他にも医師の指示があれば訪問リハビリテーションの利用もできます。

6.おわりに

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DCDは、運動が上手にできない「不器用」を呈する発達障害のひとつです。運動が苦手さは心の成長にも影響し早期から支援をする必要があります。

支援方法には過程指向型アプローチと課題指向型アプローチの2種類がありました。

もしかしたら子どもがDCDかも…と悩んでいる場合、児童相談所などで専門の訓練を受けられないか相談して下さい。そして支援を受けられるようになった場合、どのような支援方法で行うのかを確認して、子どもにとってより良い支援方法を選択しましょう。