子どもの手先が不器用な原因には、微細運動の発達がゆっくりである可能性があります。
この記事を読むことで、子どもの不器用さの一要因である微細運動の発達について理解が深まるとともに、実際にどのような遊びをして微細運動の発達を促せば良いかわかるようになります。
微細運動とは?
微細運動とは、物に手を伸ばす動作・物をつかむ動作・道具を使う動作などの手を使った運動のことをいいます。
子どもの発達は
- 運動発達(運動能力)
- 認知発達・知的発達(頭がよいとされる能力)
- 社会性発達(他人と上手に付き合っていく能力)
の3つに大別されますが、微細運動は「運動発達」に含まれています。
微細運動の発達
運動発達には4つの原則があるのですが、
この中の「身体近位から遠位への発達」を理解すると微細運動の発達を理解しやすくなります。身体近位から遠位への発達とは簡単にいうと、体幹から肩・肘・手・手指というように少しづつ遠くに位置する体の機能が発達するということです。
微細運動の発達をまとめると以下の段階にわけることができます。
- 手を伸ばす(リーチング)運動 : 肩関節と肘関節の組み合わさった運動
- 手全体で大きいものをつかむ運動:手掌と手指の組み合わさった運動
- 手指で小さいものをつまむ運動 : 手指(親指・人差し指・中指)の運動
となります。
手を伸ばす(リーチング)運動:肩関節と肘関節の組み合わさった運動
手を伸ばす(リーチング)運動は、生後4週以内の新生児期からプレリーチングとして始まっているとされています。その後、生後3ヶ月になると両手を顔の目の前で触れ合わせることや、自身の手を眺める行動(ハンドリガード)が見られるようになります。
そして4~5か月になると、目の前の対象物に手を伸ばす行動であるリーチングをするようになるのです。リーチング運動の初期の段階では対象物に対して直線的にリーチングをすることはできませんが、徐々に対象物に対して直線的に手を伸ばすことができるようになっていきます。
リーチング運動ができるようになると、手を伸ばしたままの状態を保つことができるようになるため手掌・手指を使ったつかみ・つまみ運動が急速に発達していきます。
手全体で大きいものをつかむ運動:手掌と手指の組み合わさった運動
つかむ運動は専門用語では「把握運動」と呼ばれています。
リーチング動作を獲得した生後5か月ごろは小指側の手掌と手指を用いた把握である「尺側握り」になりやすいです。そして7~8か月ごろまでになると親指側の手掌と手指を用いた把握である「橈側握り」が見られるようになります(図1を参照)。
手指で小さいものをつまむ運動:手指(親指・人差し指・中指)の運動
把握運動が発達してくると、いよいよさらに小さい対象物を持つ「つまむ運動」が発達していきます。
生後7~8か月までには側腹つまみ(親指と人差し指の側面)ができるようになり、9~12か月になると三指つまみ・指腹つまみ、さらに小さい対象物では指尖つまみができるようになります(図1を参照)。12~15か月になると指先でつまんだ対象物を自分の掌に移動させることができるようになります。そして3歳ごろになると、うちわを仰いだり、牛乳のふたを開けたりするときに見られる手首の回転運動が見られるようになります。
これらの手指の機能を洗練させていくことで鉛筆などの道具を上手に扱えるようになっていくのです。
つかみ・つまみ動作の確認
ここからは実際に子どもの微細運動を確認する方法について解説していきます。
1歳前後のお子さん
1歳前後のお子さんは、先に示した「つかみ・つまみ運動」ができているのかということをか確認しています(図1を参照)。
中々指腹つまみが見られないというお子さんでも、対象物の大きさや形を変更することでより難しいつまみ動作が見られるようになります。
2歳から6歳までのお子さん
2歳から6歳までのお子さんは、改訂版 随意運動発達検査¹⁾に記載されている A.手指 の検査を使用して微細運動が他の年齢のお子さんと比較して発達しているのか、ゆっくり発達しているのかを確認をします。
こちらの検査は2歳から6歳11か月までの健常児723名を対象にして実施されています。
各動作を1つ1つ子供に見せて、実際に模倣をしてもらう検査となっています。
各動作ごとに健常児の90%ができるようになる基準年齢が示されているため、動作が できた・できなかった によって健常児との比較が容易にできるようになっています。以下に検査の一部を引用しますので、気になるかたは論文をご覧になってください。
手先の器用さを促す遊び
微細運動は、手先をつかって細かい作業に取り組む経験が増えるほど発達していきます。
そのため指先をつかった遊びをすることが大切になります。
遊びの例としては、シールはがし・ひも通し・粘土遊び・折り紙・洗濯ばさみを使用した遊びなどが挙げられます。
さまざまな種類の遊びがありますが、指先をつかった遊びをする上で大切なことは
発達にいいからと大人が無理やり遊びを強要するのではなく、子どもが熱中して遊べるようにしてあげることです。
最後に記者が実際に用いている遊びを紹介して記事を終わろうと思います。
それはコイン遊びです。コインを一つ一つ箱に入れるのではなく1度に3枚程度まとめていれるようにすると、親指から小指を細かく別々に動かす練習になります。
特にピースをしようとすると上手にできなくて3本指が立ってしまうお子さんなどにはよいでしょう。
課題としても、コインの大きさや形を変えると難しさは容易に変えることができますし、コインの入れ口をキャラクターの顔に変更すれば子どものやる気を引き出すこともできます。
よかったら試してみてください。
参考・引用文献
1)山根律子,水戸義明 他「改訂版 随意運動発達検査」,音声言語医学,1990年