認知症の症状といえば、「もの忘れ」が浮かんできませんか?
実は認知症の症状は
- 中核症状
- 行動・心理症状( BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia )
の2つにわかれます。
この記事では、認知症の症状についてまとめました。
中核症状
認知症は脳の病気なので、必ず認知症の原因となる病気が存在します。
原因の病気によって、脳の器質的変化(もとの形にもどらないような変化)が起こるため、中核症状は認知症患者さんに出現する症状となります。
中核症状とは、脳の器質的変化によって出現する認知機能の低下や障害のことをいいます。
その症状とは、
- 記憶障害
- 見当識障害
- 遂行機能障害
- 理解力・判断力の低下
- 失語
- 失行
- 失認
の7つの症状になります。すべての症状が発症するとは限りませんが、認知症の原因疾患の一つである「アルツハイマー型認知症」では記憶障害を発症します。このように認知症にいたる原因疾患によって発症する中核症状は異なるのです。
記事の冒頭のもの忘れとは記憶障害のことです。実はもの忘れは認知症の中核症状の中の一つだったのです。
行動・心理症状
中核症状に環境や本人の性格が影響して現れる症状のことです。
英語ではBehavioral and Psychological Symptoms of Dementiaとされ、BPSDとよばれています。
その症状とは、
1.行動症状(Behavioral): 徘徊・異食・暴力など
2.心理症状(Psychological ): 不安・焦燥・幻覚・妄想など
これらの症状が見られます。
担当させていただいた患者さん
私は病院で認知症をお持ちの方を担当しています。
心不全で病院に入院されたアルツハイマー型認知症と診断のある患者さんでした。
50m程度の距離を独歩で歩くことができました。この方は短期記憶障害と理解力・判断力の低下(中核症状)があり、毎日ナースステーションでこのような訴えをしていました。
「赤色カーディガンを着ていたけど、気がついたら赤色カーディガンがなくなってしまったの。どこを探しても見つからないんです。きっと毎日部屋(病室)に入ってくる人の誰かが持っていたんだと思います。」
実際のところは別のカーディガンを息子さんが持ってきて下さったため、赤色カーディガンは息子さんが洗濯するために持って帰っていました。
本人の気持ちを落ち着かせるために息子さんから本人に電話をしてもらいましたが、電話をした直後は納得されるものの、時間が経つとカーディガンがないと訴えを繰り返していました。
この方は、中核症状で短期記憶障害と理解力・判断力の低下があり、病院という見なれない環境での生活が重なり、ものとられ妄想(行動心理症状)を発症していました。
このように行動心理症状は環境と本人の性格が影響して発症にいたります。病院のリハビリでは、患者さんの中核症状を正確に捉えて、環境・本人の性格が影響して出現する周辺症状を予防し、患者さんが安心して入院生活を送れるように関わっています。