背景
箸はアジア圏内において一般的な食具です。いくつかの研究では伝統的な箸の持ち方が機能的であるとされ推奨されていますが、箸の持ち方と機能性について検討された研究はわずかです。
今回の研究では、幼児期の箸の持ち方を分類し、各々の持ち方の機能性を比較しました。
箸の持ち方を4つのタイプに分けて機能性を比較した
参加者は、普段から箸を使って食事をする5~6歳の子どもです。
参加者の箸の持ち方を分類し、全員に4つの実験課題を実施しています。タスクでは4種類の食品が使用され、テーブルの上の皿に置かれました。食器の位置が機能性に与える影響を調べるため、食器は
(a)利き手側に近く体に近い位置
(b)利き手側に近く体から遠い位置
(c)非利き手側に近く体に近い位置
(d)非利き手側に近く体から遠い位置の4つの位置に置かれました
4つのタスクの詳細は以下の通りである。
1. 豆腐を拾って運ぶ課題(豆腐課題): 豆腐(2.5×2.5×2.5cm)を皿からつまみ上 げ、参加者の前に置いた容器に入れる。
2. 大豆を拾って&運ぶ課題(大豆課題): 大豆を皿から拾い上げ、参加者の前にある容器に入れる。
3. 米をすくい上げて運ぶ課題(お米課題): お皿からお米をすくい上げ、参加者の目の前の容器に入れる。
4. 小麦粉の生地を切る課題(小麦粉生地を切る課題): 細長い小麦粉の生地を皿に乗せ、箸で1cm間隔に切る。
箸の持ち方は機能性(つまむ・すくう)に影響しなかった
比較の結果は以下の通りになりました。
“For the tofu, soybean, and rice tasks, there were no significant differences between the average task scores of the traditional and four untraditional grasping types at all dish positions. However, for the flour dough task, the average task score of the traditional type was significantly higher than that of types II and IV at dish position (b) (p<0.05).”
豆腐、大豆、米の課題では、すべての食器位置において、伝統的な把持タイプと非伝統的な4つの把持タイプの平均得点に有意差はなかった。しかし小麦粉生地を切る課題では、皿の位置(b)において、伝統的な持ち方の平均スコアがタイプIIおよびIVよりも有意に高かったp<0.05(以下の図を参照)。
今回の研究では、箸の機能を「つまむ・すくう・切る」の3つの動作にて比較していますが、「切る」動作の平均スコアが低く、その他の機能性よりも低いことが示されました。これは、幼児期では箸を使って「切る」動作を使用する機会が少ないことが影響しているのではないかと言及されています。
また今回の比較では、お皿の位置(b)のみに有意差があり、似ている条件であった(d)では有意差が出なかったことの原因までは特定できなかったと言及されています。