子どもの発達

【論文紹介】小学生・中学生の実行機能と学業成績、社会的行動の関係性

背景

実行機能は、学業成績だけではなく、行動の自己制御に関連することが知られていますが、実行機能は小学生・中学生における学業成績ならびに社会的行動を予測するのでしょうか。

今回の研究では、学業成績・社会的行動に対する実行機能の予測力を調べることです。またそれらが小学生と中学生で変わらないかどうかを確認することです。

実行機能検査を実施し、学業成績と社会的行動の関係性を分析した。

・対象は、8歳から13歳の小中学生(N=146 平均年齢10歳9カ月 SD:1.4)

・対象者は以下の評価を受けました。
  実行機能評価(TMT:A/B  言語流暢性テスト ストループテスト)
   学業成績(通信簿・知能‐社会的性教師評価尺度)
   社会的行動(クラス内での人気者投票・クラスメイトおよび教師が評価した向社会行動)

実行機能は、小学生の学業成績と社会的行動・中学生の学業成績と向社会行動を予測する

重回帰分析の結果、
 小学生では
  ・学業成績の41%を実行機能が予測する
  ・社会行動の29%を実行機能が予測する

 中学生では
  ・学業成績の13%を実行機能が予測する
  ・向社会行動の15%を実行機能が予測する
いずれも実行機能検査ではTMTが高い予測力を示した。

今回の研究で、実行機能が学業成績と社会的行動を予測することが明らかになりましたが、その予測力は小学生・中学生で異なるというものでした。
また実行機能検査ではTMTがもっとも高い予測力を示すことがわかりました。TMTは鉛筆と紙だけでできる簡便な検査となっています。
しかし今回の研究ではサンプル数が少ないため、結果の解釈は慎重になることが必要であると考察されていました。

参考文献

Zorza JP, Marino J, Acosta Mesas A. Executive Functions as Predictors of School Performance and Social Relationships: Primary and Secondary School Students. PMID: 27169746.