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【論文紹介】SMA(脊髄性筋萎縮症)における側弯症と治療の進歩:病態と手術の現状 スコーピングレビュー

脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy: 以下SMA)の治療に革命をもたらすヌシネセン(スピンラザ)・リスジプラム(エブリスディ)・遺伝子治療(ゾルゲンスマ)などの疾患修飾治療(DMTs)が登場し、患者の運動機能や生存率が大きく向上しました。
しかしその一方で、これらの治療が脊柱側弯症の発症や進行に与える影響については、明確な結論が得られていません。
この記事では、最新のスコーピングレビューをもとに、SMAと側弯症に関する知見を紹介します。

SMAタイプ別に異なる側弯症のリスク

SMAには1〜4型までに分類されていますが、本研究では1〜3までのタイプの方を対象にしていました。
SMAは分類によって重症度が異なります。それに伴い、側弯症の発症率や進行も変わってきます。

脊柱側弯症のリスクは、SMAタイプ1、2、3において非常に有病率が高いことが示されました。

1型:早期治療によってコブ角(脊柱の曲がりの角度)は軽減できますが、急速な側湾の進行が認められることがあり、重度の側弯症は依然として大きな問題です。

2型:最も側弯症のリスクが高く、明確に評価された患者の100%に側弯症がみられたという報告もあります。

3型:比較的軽症ですが、年齢とともに側弯症が進行する傾向があります。

側弯症手術時の平均年齢は? タイプによって異なる介入時期

手術の平均年齢もタイプによってばらつきがあります。

1型:早いケースでは18ヵ月で手術を受けることも(ただし報告によって12歳以上の例もある)。

2型:平均7歳前後での手術が一般的。自力で座る機能が失われる前に介入するケースが多い。

3型:16歳頃に手術されることが多く、ゆっくりとした進行が特徴です。

👨‍💻注目ポイント👨‍💻
リハビリの重要性と座位開始のタイミング

DMTsによって自然経過では座位を獲得することが難しかったSMAⅠ型の患者でも座位保持が可能になってきました。その中で体幹筋を意識したリハビリテーションの重要性を著者は強調しています。

論文の中で著者は次のように考察しています:
SMAの患者さんの体幹筋は、もともと座位や立位を安定して保つための構造にはなっていない可能性がある
・体幹筋の強化なしに、無理に座らせる試みは避けるべき
・SMAⅠ型の子どもを”座らせるタイミング “を判断するには、さらに研究が必要

上記の考察は、普段の臨床に臨むうえで大切なことを示唆していると感じています。

まとめ

疾患修飾治療(DMTs)の進歩により、SMA患者の生活ならびに運動機能は大きく変わってきました。
しかし、その反面として側弯症の発症や進行が新たな課題となっています。

DMTsは運動機能の向上には効果があるが、脊柱側湾症の予防までは対応できていない。
側弯症の進行には早期発見と適切な介入が重要。
リハビリの質とタイミングが、機能改善やQOLの向上に直結する可能性がある。

「治療の進歩は、リハビリと姿勢管理の質を問う時代をもたらした」といえるのかもしれません。

このブログ記事は、医療やリハビリに関わる方はもちろん、SMAに関心のあるご家族にも届いてほしい情報です。
疑問や気になる点があれば、コメント欄やお問い合わせからぜひご連絡ください。

論文リンク

※本記事は「Gnazzo M, Pisanò G, Piccolo B, Turco EC, Esposito S, Pera MC. Scoliosis in spinal muscular atrophy in the era of disease-modifying therapy: a scoping review. Neurol Sci. 2025 Apr 2.」を参考にしています。論文は閲覧可能です。