今回は、自閉スペクトラム症(ASD)の幼児を対象としたとても興味深い論文を紹介します。
ASD児は健常児と比較して、「不安症状」を発症することが多いことが知られています。
筆者の臨床経験上では、幼稚園に通園する道がいつもと違ったり、いつもの挨拶をしてくれていた先生が突然変わったなど、本人の予想外の出来事に直面すると不安の表出が強くなることなどが挙げられます。
この論文では、
・感覚過敏(sensory hyperreactivity)
・不安(anxiety)
・不確実性耐性の低さ(intolerance of uncertainty:IU)
という3つの要素の関係を、詳細な統計解析で調べています。
研究の目的🔬
幼児期のASDの子どもたちにおいて、感覚過敏が不安やIUとどう関係しているのか。
それぞれが単独で関連しているのか、あるいは媒介(間に他の要素が入る)によって影響し合っているのか。
この疑問を明らかにするために、研究が実施されました。
明らかになったポイント
感覚過敏は不安やIUと強く関連していて、
感覚過敏は、不安とIUを媒介して不安とIUを高めるというルートが示されました。

また発達初期からみられる感覚過敏は不安症状の強さを予測する因子になることが示唆されました。
臨床にどのように役立つ?👨💻
感覚過敏や不安、IUはASDの子どもたちの生活の質に大きく影響する要素です。
IU:不確実性耐性の低さという概念は、ASDを有する子どもの多くが「見通しのできない活動では情緒的に不安定になってしまう」ことを説明しています。
この研究の結果は、ASD児への支援や介入を考える際に、
感覚過敏さがある子どもには、IUと不安が強いことが想定されるため、これから実施する活動を事前に視覚的にスケジュールを示すことが大切であるということを教えてくれています。
まとめ
ASDの特性は一人ひとり異なり、感覚や情緒の困りごとは非常に個別性があります。
今回の研究はその一端を科学的に解明するもので、支援者や家族にとっても参考になる内容だと考えます。
論文リンク
※本記事は「The relationship between sensory reactivity, intolerance of uncertainty and anxiety subtypes in preschool-age autistic children – Keren MacLennan, Timothy Rossow, Teresa Tavassoli, 2021」を参考にしています。論文は閲覧可能です。